医療現場で働く看護師の間で「LP手当」という言葉を耳にすることがあります。初めて聞く方にとっては、何の略称なのか、どのような手当なのか分かりにくいかもしれません。LP手当は、看護師の夜勤労働に対して支給される重要な手当の一つで、看護師の給与体系を理解する上で欠かせない知識です。
本記事では、LP手当とは何か、その定義から具体的な計算方法、他の夜勤手当との違い、支給基準、そして看護師の働き方への影響まで、幅広く詳しく解説していきます。看護師として働いている方、これから看護師を目指す方、医療機関で人事・労務を担当している方にとって、参考となる包括的な情報を提供します。
LP手当の基本的な定義と制度概要
LP手当について正しく理解するために、まず基本的な定義と制度の概要を確認しましょう。
LP手当とは何か、正式名称と由来
LP手当とは、「Late and Preparation手当」または「Late and Post手当」の略称です。医療機関によって呼び方が異なる場合もありますが、一般的には夜勤の一種である「準夜勤」や「遅出勤務」に対して支給される手当を指します。
LPという略称の由来には複数の説があります。最も一般的なのは、「Late(遅い)とPreparation(準備)」または「Late(遅い)とPost(後)」を組み合わせたものという解釈です。遅い時間帯に勤務し、夜間の準備や夜勤後の業務を担当することから、この名称が使われるようになったとされています。
LP手当が支給される勤務形態は、主に準夜勤や遅出勤務と呼ばれるシフトです。具体的には、夕方から深夜にかけての勤務(例:16時~翌1時、17時~翌2時など)を指します。日勤よりも遅い時間帯に開始し、深夜帯にかかる勤務に対して支給される手当です。
医療機関によっては、LP手当という名称を使わず、「準夜勤手当」「遅出手当」「夜勤手当B」などと呼ぶこともあります。また、病院独自の呼称を使っている場合もあります。そのため、就職や転職を検討する際には、手当の名称だけでなく、実際の勤務時間と支給額を確認することが重要です。
LP手当は、労働基準法で定められた法定の手当ではありません。深夜労働(22時~翌5時)に対しては、労働基準法で25%以上の割増賃金が義務付けられていますが、LP手当はそれとは別に、医療機関が独自に設定する手当です。
多くの医療機関では、日勤と夜勤の中間に位置する準夜勤を設けることで、24時間体制の看護業務を効率的に運営しています。この準夜勤は、通常の日勤とは異なる負担(生活リズムの変化、深夜帯への対応など)があるため、その補償としてLP手当が支給されます。
LP手当が支給される勤務時間帯
LP手当が支給される具体的な勤務時間帯は、医療機関によって異なりますが、一般的なパターンを見ていきましょう。
最も一般的なLP勤務(準夜勤)の時間帯は、16時~翌1時または17時~翌2時です。この9時間勤務(休憩1時間を含む場合は拘束10時間)は、日勤の終了時刻から引き継ぎ、深夜帯の初期をカバーし、深夜勤務者に引き継ぐという流れになります。
別のパターンとしては、15時~24時、16時~24時といった勤務もあります。この場合、深夜帯(22時以降)は短めになりますが、夕方から夜にかけての忙しい時間帯をカバーします。夕食時の介助、面会者対応、夜間の検査や処置などを担当します。
一部の医療機関では、14時~23時、13時~22時といったやや早い時間帯の「遅出勤務」もLP勤務として扱われることがあります。この場合、深夜帯にかからない、またはわずかしかかからないため、深夜割増賃金は発生しないか、少額になります。
LP勤務の特徴は、日勤と深夜勤の橋渡しをする役割です。日勤スタッフから患者の状態や業務の引き継ぎを受け、夕方から夜にかけての業務(夕食介助、就寝準備、夜間の巡回など)を行い、深夜勤スタッフに引き継ぎます。
勤務時間の長さは、8時間勤務、9時間勤務など、医療機関によって異なります。労働基準法では、1日8時間、週40時間が法定労働時間とされていますが、変形労働時間制を採用している医療機関では、シフトによって勤務時間が異なる場合があります。
休憩時間の取り方も重要です。8時間勤務の場合は1時間の休憩が一般的ですが、忙しい医療現場では、休憩を十分に取れないこともあります。休憩時間が取れなかった場合、その時間は労働時間としてカウントされ、時間外労働となります。
LP勤務の頻度は、看護師の配置状況やシフトの組み方によって異なります。月に4~8回程度のLP勤務が組まれることが一般的ですが、人手不足の病棟では、より多くのLP勤務を担当することもあります。
LP手当の金額相場と計算方法
LP手当の金額は、医療機関の規模、地域、夜勤体制などによって大きく異なりますが、一般的な相場と計算方法を見ていきましょう。
LP手当の金額相場は、1回あたり3,000円から7,000円程度が一般的です。大学病院や大規模な総合病院では、1回あたり5,000円から8,000円程度、小規模な病院やクリニックでは、2,000円から4,000円程度のことが多いです。
LP手当の金額は、夜勤手当(深夜勤)よりも低めに設定されるのが一般的です。深夜勤は、深夜帯全体(通常8時間以上)をカバーし、身体的負担も大きいため、手当額も高く設定されます(1回あたり8,000円~15,000円程度)。LP勤務は、深夜帯の一部のみをカバーするため、手当額は深夜勤よりも低くなります。
計算方法は、定額制が最も一般的です。LP勤務を1回行うごとに、あらかじめ定められた金額(例:5,000円)が支給されます。勤務時間の長さや深夜時間帯の長さに関係なく、1回あたり定額という形です。
一部の医療機関では、時間比例型の計算方法を採用しています。例えば、「深夜時間帯(22時~翌5時)の1時間あたり○○円」といった形で、実際の深夜労働時間に応じて手当額が変動します。この方式は、より公平性が高いと言えますが、計算が複雑になります。
LP手当とは別に、労働基準法で定められた深夜割増賃金(25%以上)も支給されます。22時以降の労働に対しては、通常の時給に25%を上乗せした賃金が支払われます。LP手当は、この法定の深夜割増賃金とは別の、付加的な手当です。
具体例で計算してみましょう。時給2,000円の看護師が、16時~翌1時(9時間、休憩1時間、実労働8時間)のLP勤務をした場合、給与は以下のようになります。
- 16時~22時(6時間):2,000円×6時間=12,000円
- 22時~翌1時(3時間、深夜割増25%):2,000円×1.25×3時間=7,500円
- LP手当(定額):5,000円
- 合計:24,500円
このように、LP手当は基本的な賃金や深夜割増賃金に加えて支給されるため、LP勤務は日勤よりも高い収入が得られます。
LP手当と他の夜勤手当の違い
看護師の夜勤には、LP勤務以外にも様々な勤務形態があり、それぞれに対応する手当があります。これらの違いを理解しましょう。
深夜勤手当(夜勤手当)は、深夜帯をメインにカバーする勤務に対する手当です。一般的な深夜勤の時間帯は、0時~翌9時、1時~翌9時、22時~翌7時などです。深夜帯全体をカバーするため、手当額も最も高く設定されます(1回あたり8,000円~15,000円程度)。
LP手当との違いは、勤務時間帯と手当額です。深夜勤は深夜帯がメインですが、LP勤務は夕方~深夜初期がメインです。深夜勤手当の方が高額に設定されるのが一般的です。
日勤手当という概念は通常ありません。日勤(8時~17時、9時~18時など)は通常の勤務時間帯であり、特別な手当は支給されないのが一般的です(ただし、休日日勤の場合は休日出勤手当が支給されます)。
夜勤専従手当は、夜勤のみを専門に行う看護師に支給される手当です。夜勤専従看護師は、日勤を行わず、夜勤(深夜勤やLP勤務)のみを担当します。夜勤専従手当は、月額数万円から十万円以上の高額な手当が設定されることがあり、通常の夜勤手当とは別に支給されます。
二交代制と三交代制でも、手当の体系が異なります。三交代制の場合、日勤、準夜勤(LP勤務)、深夜勤の3つのシフトがあり、それぞれに対応する手当が設定されます。二交代制の場合、日勤と夜勤(16時間勤務など)の2つのシフトで、夜勤手当は高額になります(1回あたり1万5千円~2万円以上)。
オンコール手当(待機手当)は、自宅待機をして、緊急時に呼び出されたら出勤する体制に対する手当です。実際に出勤した場合は、別途時間外手当が支給されます。オンコール手当は、1回あたり1,000円~3,000円程度が相場です。
これらの手当は、それぞれ独立して支給されるため、例えばLP勤務をした場合は、LP手当+深夜割増賃金が支給され、深夜勤をした場合は、深夜勤手当+深夜割増賃金が支給されるという形になります。
LP手当の支給条件と看護師への影響
LP手当の基本を理解したところで、実際の支給条件や、看護師の働き方への影響について見ていきましょう。
LP手当が支給される条件と対象者
LP手当は、すべての看護師に支給されるわけではありません。支給される条件と対象者について確認しましょう。
最も基本的な条件は、LP勤務(準夜勤)に実際に従事したことです。シフト上でLP勤務に割り当てられ、その勤務を完遂した場合に、1回分のLP手当が支給されます。勤務途中で体調不良などにより早退した場合、手当が減額されたり、支給されなかったりすることがあります。
正職員(正規雇用の看護師)は、通常LP手当の対象となります。病棟勤務の看護師は、三交代制または二交代制のシフトに入るため、LP勤務を担当する機会があり、その都度LP手当が支給されます。
パート・アルバイトの看護師については、医療機関によって扱いが異なります。パートでもLP勤務に入る場合は、正職員と同様にLP手当が支給される医療機関もあれば、パートには夜勤手当自体を支給しない(その分、時給を高く設定する)医療機関もあります。
派遣看護師の場合も、派遣契約の内容によります。夜勤専従の派遣看護師として採用された場合、夜勤手当が時給に含まれているか、別途支給されるかは、派遣会社や派遣先の医療機関との契約次第です。
新人看護師(新卒看護師)は、入職後すぐにはLP勤務に入らないことが一般的です。通常、3か月から半年程度の研修期間を経て、日勤での業務に慣れてから、夜勤シフトに入ります。LP勤務に入るようになってから、LP手当の支給が開始されます。
妊娠中の看護師や、育児中の看護師で夜勤免除を申請している場合は、LP勤務に入らないため、LP手当も支給されません。労働基準法や育児・介護休業法では、妊産婦や育児中の労働者が夜勤免除を請求した場合、使用者は夜勤をさせてはならないと定められています。
管理職(看護師長、主任など)も、実際にLP勤務に入る場合は、LP手当が支給されることが一般的です。ただし、管理職手当が支給されている場合、夜勤手当との兼ね合いで調整されることもあります。
外来勤務や手術室勤務など、通常夜勤がない部署の看護師は、LP手当の対象外です。ただし、緊急手術の対応などで夜間に出勤した場合は、時間外手当や休日出勤手当が別途支給されます。
LP手当の税金と社会保険への影響
LP手当は給与の一部として支給されるため、税金や社会保険料の計算にも影響します。
所得税については、LP手当を含む給与総額に対して課税されます。LP手当は非課税ではないため、手当が増えればその分、課税所得も増え、所得税額も増加します。ただし、所得税は累進課税であり、年収が一定以下であれば、税率も低く抑えられます。
住民税についても、LP手当を含む年間の給与総額に基づいて計算されます。住民税は前年の所得に対して課税されるため、LP勤務を多く行った年の翌年に、住民税が増加することになります。
社会保険料(健康保険料、厚生年金保険料)は、標準報酬月額に基づいて計算されます。LP手当を含む月々の給与の平均額が標準報酬月額として設定され、それに応じた保険料が徴収されます。LP手当が多ければ、標準報酬月額も高くなり、社会保険料も増加します。
ただし、社会保険料が増えることは、必ずしもデメリットではありません。厚生年金保険料が増えれば、将来受け取る年金額も増加します。また、健康保険料が増えても、受けられる医療サービスの質や範囲は変わりません。
雇用保険料も、給与総額に対して一定率で計算されます。LP手当を含む給与が増えれば、雇用保険料も増加しますが、失業時に受け取る失業給付の金額も増えることになります。
手取り額への影響を考えると、LP手当によって総支給額が増えても、税金や社会保険料も増えるため、手取り額の増加は総支給額の増加よりも小さくなります。一般的には、総支給額の増加分の70~80%程度が手取り額の増加になると考えられます。
確定申告が必要になるケースもあります。年収が2,000万円を超える場合や、2か所以上から給与を得ている場合などは、確定申告が必要です。また、医療費控除やふるさと納税などの控除を受ける場合も、確定申告を行うことで税金の還付を受けられます。
LP勤務の身体的・精神的負担
LP手当が支給される背景には、LP勤務特有の身体的・精神的負担があります。この負担について理解することは、手当の意義を理解する上で重要です。
生活リズムの乱れは、LP勤務の大きな負担の一つです。夕方から深夜にかけての勤務は、通常の生活リズムとは異なります。勤務終了が深夜1時や2時になると、帰宅してから就寝するのは深夜2時や3時になり、睡眠時間が不規則になります。
睡眠不足や睡眠の質の低下も問題です。深夜に帰宅してから眠っても、昼間の光や騒音で十分な睡眠が取れないことがあります。また、次の日が日勤の場合、数時間しか眠れないこともあり、慢性的な睡眠不足に陥りやすくなります。
身体的疲労も大きいです。夕方から深夜にかけては、患者の夕食介助、就寝準備、夜間の巡回、緊急時の対応など、身体を使う業務が多くあります。また、深夜帯は人員が少なくなるため、一人あたりの業務負担が増えます。
精神的ストレスも無視できません。夜間は医師が当直体制となり、日中ほど手厚くないことが多いです。そのため、看護師が患者の異変に気づき、適切に判断して対応する責任が重くなります。緊急事態が発生した場合、限られた人員で対応しなければならないプレッシャーもあります。
家庭生活への影響も大きいです。LP勤務の日は、家族との夕食を共にできず、子供を寝かしつけることもできません。特に、小さな子供がいる看護師にとっては、LP勤務は家庭生活との両立が難しい勤務形態です。
社会生活への影響もあります。夕方から深夜の時間帯は、友人との食事や趣味の活動など、社会的な活動が行われる時間帯です。LP勤務が多いと、こうした活動に参加しにくくなり、社会的孤立を感じることもあります。
健康への長期的影響も懸念されます。不規則な生活リズムは、睡眠障害、消化器系の疾患、循環器系の疾患、精神疾患などのリスクを高めると言われています。夜勤が多い看護師は、これらの健康リスクに注意が必要です。
LP手当は、こうした身体的・精神的負担に対する経済的補償の意味合いがあります。手当があることで、負担の大きいLP勤務を引き受けるモチベーションになり、24時間体制の医療を支える看護師の貢献が報われることになります。
LP手当と看護師の収入への影響
LP手当は、看護師の総収入にどの程度影響するのでしょうか。具体的なシミュレーションを見ていきましょう。
LP勤務の頻度が月4回の場合、LP手当が1回5,000円であれば、月額2万円の収入増になります。年間では24万円の増収です。これは決して小さくない金額であり、看護師の年収を底上げする重要な要素です。
LP勤務の頻度が月8回の場合、月額4万円、年間48万円の収入増になります。基本給が月額25万円の看護師であれば、LP手当だけで年収が約16%増加することになります。
ただし、前述のように、税金や社会保険料も増加するため、手取り額の増加はこれよりも小さくなります。年間48万円の手当増に対して、手取りの増加は35万円~40万円程度と考えられます。
LP勤務と深夜勤を組み合わせることで、さらに収入を増やすことも可能です。例えば、月にLP勤務4回、深夜勤4回を行う場合、LP手当2万円+深夜勤手当4万円(1回1万円×4回)=月額6万円、年間72万円の夜勤手当が得られます。
夜勤専従看護師の場合、さらに高収入が見込めます。夜勤専従手当(月額5万円~10万円)に加えて、毎回の夜勤手当(LP手当や深夜勤手当)が支給されるため、年収ベースで一般の看護師よりも100万円以上高くなることもあります。
一方で、LP勤務を全く行わない看護師(外来専属、日勤のみの部署など)は、これらの手当を受け取れないため、同じ経験年数や能力であっても、年収に大きな差が出ます。病棟勤務と外来勤務では、年収で50万円~100万円以上の差がつくこともあります。
LP手当に関する総合的な理解
LP手当の今後の動向と課題
今回はLP手当とは何かという疑問に対して看護師の夜勤手当制度について基本的な定義から計算方法支給条件身体的影響まで幅広くお伝えしました。以下に、今回の内容を要約します。
・LP手当とはLate and Preparation手当の略で準夜勤や遅出勤務に対して支給される看護師の夜勤手当である
・一般的な勤務時間帯は16時から翌1時や17時から翌2時などで日勤と深夜勤の橋渡しをする役割がある
・LP手当の金額相場は1回あたり3,000円から7,000円程度で深夜勤手当よりも低めに設定される
・LP手当は労働基準法で定められた深夜割増賃金とは別に医療機関が独自に設定する手当である
・深夜勤手当は深夜帯全体をカバーする勤務に対する手当でLP手当よりも高額である
・正職員は通常LP手当の対象だがパートや派遣看護師は契約内容により異なる
・LP手当は課税対象で給与総額に含まれるため所得税住民税社会保険料の計算に影響する
・LP勤務は生活リズムの乱れ睡眠不足身体的疲労精神的ストレスなど特有の負担がある
・LP勤務を月4回行えば月額2万円年間24万円の収入増となる
・LP勤務を全く行わない看護師との年収差は50万円から100万円以上になることもある
・夜勤専従看護師はLP手当や深夜勤手当に加えて夜勤専従手当も受け取れるため高収入が見込める
・LP手当は看護師の24時間体制の医療を支える重要な役割に対する経済的補償である
・医療機関によってLP手当の名称や金額が異なるため就職転職時には詳細確認が必要である
・LP勤務の負担を軽減するために適切な休息勤務間インターバルの確保が重要である
・LP手当を含む夜勤手当制度は看護師の処遇改善と人材確保のために不可欠な仕組みである
LP手当は、看護師が準夜勤という特殊な勤務形態で働くことに対する重要な補償制度です。本記事で紹介した情報を参考に、LP手当の仕組みを理解し、自分のキャリアや働き方を考える際の参考にしていただければ幸いです。看護師として働いている方、これから看護師を目指す方は、LP手当を含む夜勤手当制度について、就職先や勤務先の人事担当者に詳しく確認することをおすすめします。夜勤手当は看護師の収入の重要な部分を占めるため、制度を正しく理解することが、充実したキャリアを築くために役立ちます。

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